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第32回
分析機器の寿命は何で決まるの?<Ⅱ>

以前にも紹介(第1回コラム)したように、ガスクロマトグラフィー(以下GC)やガスクロマトグラフィー-マススペクトロメーター(以下GC-MS)は、異臭分析には欠かせない分析装置です。 GC-MSの検出器は、今でも感度の向上や、MS/MSへと日々進化しています。

しかし、GCは30年程前にフューズドシリカキャピラリーカラムが登場してからは、そんなに大きくは変化していません。 分析機器メーカーにとっては良いことかどうか分かりませんが、良い装置に当たれば、10年、20年と長く使える装置です。

我々も、現アジレントテクノロジー社のGC、5890A(写真1)6890A(写真2)7890A(写真3)を使っています。
5890Aは1988年に購入、26年目の今でもTCD検出器の出口でにおいを嗅ぐ、におい嗅ぎGCとして現役です。
6890Aは1997年に購入、17年目の今もFID検出器を使って油汚れの異物やフレーバー成分の定量にフル稼働です。
7890Aは日本電子GC-MSのGCとして2009年に購入し、異臭分析に大活躍しています。

写真1. 5890A 写真2. 6890A 写真3. 7890A
5890A 6890A 7890A
(参考:5890Aの右上に見えるノートパソコンは、ラボラボカンパニーから購入したクロマトデータ処理装置です。)


さて、今回は、6890A のオートサンプラーの話です。
この装置では、多数のサンプルのフレーバー成分を定量しています。 この時に無くてはならないのがオートサンプラーです。 サンプルをセットしてスタートボタンを押せば、自動的に何十、何百というサンプルを分析し、結果を出してくれます。 最新の分析機器も含めて、オートサンプラーが故障すると致命的で、10年以上経ってメーカーサポートが終了していると、その時点で装置の寿命は終わりとなり、本体を含めて新しい装置を購入することとなります。

先週の月曜日、ある分析担当者から、「6890A のオートサンプラー(オートサンプラーのコントローラーG1512A)のスイッチが入りません!」 と連絡が入りました。 たしかに電源スイッチを入り切りしても反応がありません。
さっそくコントローラーの中(写真4)を見てびっくり、冷却ファンの羽が折れていて、一部部品に過熱跡が見られました。
ヒューズは確認しましたが、切れているものはありませんでした。

写真4


万事休す!
ただ、ひょっとしたら中古で手に入るかもしれないと、ネットで検索すると、アメリカで同じコントローラーを取り扱っていることが分かりました。 値段は1,500ドル(約15万円)でした。 中古で15万円出しても装置が生き返るのであれば、買い替えに必要な数百万円と比較してもたいしたことはありません。 但し、アメリカなのでどうしたものかと考えていた時に頭に浮かんだのが、分析つながりの仲間である、ラボラボカンパニー(http://www.lablab.co.jp/index.htm)の三木社長の顔でした。

さっそく相談してみたところ、国内のヤフオクで1点出店中とのこと、「電源が入ることだけが確認されているのですが、値段が1万円以下と格安なので、競り落としましょうか?」の質問に、ぜひお願いしますと依頼しました。
次の日、「競り落とせました!」と連絡があり、壊れたその週の金曜日の夕方に電源が入ることだけが確認されているコントローラーが、三木社長とともに現れました。 ディップスイッチをGC用にセットし、電源を入れ、オートサンプラーが動くことを確認することにしました。
ななんと!(当然か?)6890A は、今迄通りオートサンプラーで分析可能な装置によみがえりました。

今回の「メーカーサポート中止後の分析装置の再生」は、
(1) 古くても良い装置を何とかよみがえらせたいというもったいない精神を持った人達。
(2) 分析や分析装置そのものを真に愛する人達。
(3) ラボラボカンパニーの様な小回りが利き、利益に走らない会社。
これらの存在とネットワークがあって、初めて可能となりました。

性能の良い分析装置を出来るだけ永く使って行く為には、コントローラーや、GCの電子部品を冷却している冷却ファンなどの掃除も、数年に1回は行う必要があることを、今回改めて痛感しました。
また、データ処理用のパソコンにも冷却ファンが付いています。 皆さんここも忘れずに掃除するようにしてください。

 
(2014年10月) 
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