|
第30回 |
アイラ島モルトウイスキーの海藻の香りって何? |
|
あるきっかけでIslay(アイラ)島のウイスキー(写真1)の存在を知りました。
そのウイスキーは、スモーキー(燻製臭)とヨード臭(消毒臭)や海藻の香りが売りものと言う、Lagavulin [ラガヴーリン] と Laphroaig [ラフロイグ] です。
ヨード臭や消毒臭と言えば、ジクロロフェノール?と言うことで、早速分析してみました。
分析の結果は、図1に示しました。 |
|
|
アイラウイスキー |
|
|
|
|
図1. ラフロイグの臭い嗅ぎGC及びGC-MS分析結果 |
|
|
|
図の上部に示したTICのピークは、クレゾール類の化合物でした。 これらクレゾール類がスモーキーさを醸し出しているものと思われます。
そして、消毒臭はと、臭い嗅ぎGCで分析していると、案の定検出されたのは、p-クロロフェノールと2,6-ジクロロフェノールでした。 検出量も数十ppbと多く、これらの物質が、アイラウイスキーの海藻やヨード臭あるいは消毒臭と表現される香りの原因物質であることが判りました。
p-ブロモフェノールもGC-MSで検出されましたが、臭いはあまり強く感じられませんでした。 また、強い消毒臭をもつ2,6-ジブロモフェノールも疑われたのですが、臭い嗅ぎGCで感じ取ることはできませんでした。
いつも嫌われる異臭物質ですが、場所が変われば好まれることもあるのかと、少し驚かされました。 また、それ以上に驚かされるのは、人の嗅覚の鋭さです。
ヨード臭や消毒臭が感じられると、必ずと言ってよいほど、そのサンプルから、塩素や臭素を持つフェノール系の化合物が検出されることです。
アイラ島ウイスキーからヨード臭や消毒臭がなぜするのか?
おそらく麦芽大麦を乾燥させる時のピート(泥炭)の煙に原因があるのかもしれません。
≪ラガヴーリンに関しては、下記URLを参照ください。≫
http://www.malts.com/index.php/ja_jp/node_111/Lagavulin
アイラ島ウイスキーは有名なスコッチ・ウイスキーですが、それにちなんでちょっと一息。
“天使の分け前(取り分)”という言葉ご存知でしょうか?
ワインやブランディー、ウイスキーなど製造工程の熟成中に「水分、アルコールが樽の中から蒸発して目減りする」ことです。 “Angel's share”となんとも洒落た呼び方です。
この“天使の分け前”というタイトルの映画(http://tenshi-wakemae.jp/)がありました。 スコッチ・ウイスキーが縁で主人公の人生が変わっていくというとても胸が熱くなる映画でした。
いつもは異臭物質として嫌われるウイスキーのこのような香りも、食べ物や飲み物、草木の香りの様に、自然が我々生物に与えてくれた恵みなのでしょう。
|
|
|
|
|
|
|
|