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第24回 |
マスキングされるべきか、否か?おろし生姜にとってそれが問題だ! |
- すりおろしたての生姜とチューブ入り生姜の香りの違いとは? |
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キュウリやナスの浅漬け、冷奴になくてはならないものに、すりおろし生姜があります。 生姜嫌いの人には、どうでもよいことでしょうが、生姜好きの私にとっては欠かせない薬味の一つです。
この生姜で時々がっかりするのは、一流の旅館や料亭の看板を掲げているのに、チューブ入りすりおろし生姜が出された時や、すりおろし生姜でも時間が経っているものが出された時です。
当然、すりおろし直後の香りはなくなり、加熱した生姜や寿司屋のガリの様な甘い香りに変わってしまいます。 冷奴や浅漬けには合わず、味が台無しになってしまいます。
チューブ入り生姜の香りは、おろしたての生姜とは、まったく別物として感じられるので、色々な人に質問してみます。 残念ながら「特に違和感は無い」と答える人が多いのに驚かされます。
チューブ入りや加熱した生姜の香りは、お寿司屋さんのガリに香りが似ており、バラの様な甘い香りがします。 しかし、おろしたての生姜は、レモンの様な爽やかな香りです。 この様に香りには歴然とした違いがあるのですが、「違和感が無い」と答える人は、すりおろし直後の辛さのためか、生姜があまり好きではないのかもしれません。
では、すりおろしたての生姜と、チューブ入りや加熱した生姜で何が違うのでしょう。
実際に、香り成分を分析した結果が図1です。
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図1. 生姜の香り成分GC-MS分析チャート |
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すりおろし直後では、レモンの香りの様な爽やかな香りの物質である、ネラールやゲラニアールが検出されています。 一方、加熱した生姜では、バラの様な香りのネロールやゲラニオールが検出されています。
臭い嗅ぎガスクロですりおろし直後あるいは加熱した生姜の香り成分のそれぞれのピークを単独で嗅いでも、チューブ入り生姜を特徴付ける香りのピークは見つかりません。
しかし、すりおろし直後の生姜にゲラニオールを添加すると、チューブ入りの生姜と同じ香りになりました。 このことから、おろしたての生姜の香りが、ゲラニオールによってマスキングされているのではないかと推定されます。
ゲラニオールは、阪大の倉橋先生らの研究* によると、嗅覚マスキング剤として強い作用を持っていることが知られています。 また、皆さんも良くご存知の様に、魚や豚肉料理に生姜が臭い消しとして使われます。
分析結果からも、生姜を消臭・マスキング(ゲラニオールの効果)に使う場合は、加熱しても問題ないことがわかります。 しかし、冷奴には、ゲラニオール(ゲラニアールが酵素や酸素で変化し生成)が生成する前の、すりおろし直後の生姜が絶対に合います。
みなさんも、機会があれば是非、チューブ入りとおろしたての生姜の味(香り)を比べてみてください。 その時、できれば、冷奴かキュウリやナスの浅漬けに添えて試すことをお勧めします。
きっと、おろしたて生姜の良さが判って頂けると思います。
* AROMA RESEARCH No.39 (Vol.10/No.3 2009), 246-250
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