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第7回 |
段ボール箱の異臭 「段ボール箱からヨーグルトの臭いが!」 |
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ある依頼者から、「この段ボール箱の臭いが気になるのですが、問題ありませんか? オモチャでも似た様な臭いが感じられたことがあるのですが。」 との事で、さっそく臭いを嗅いでみました。
感じられたのはヨーグルト等の酸臭で、異臭原因物質としては、酪酸やイソ吉草酸等が推定されました。
写真の様に、箱の内側だけが臭っていました。
くさい内側を分析すると、プロピオン酸、酪酸が検出されました。
特に臭いの強い酪酸は、チーズや銀杏の臭い(異臭物質)として有名です。
異臭の無い段ボール箱の臭いを嗅いでもらったら、全ての人が 『段ボール箱の紙の匂い』 と答えました。
次に今回異臭のする段ボール箱を色々な人に嗅いでもらいました。
『新品のカラーボックスや組立家具のにおい』
『合板のにおい』
『新築の家やマンションのクローゼットのにおい』
『安物の割り箸のにおい』
『輸入木材のにおい』
『紙粘土のにおい』
『図工室のにおい』
『木工用ボンドのにおい』 等、こんなに色々な表現がありました。
紙の匂い+酪酸臭で、人によってこんなに感じ方が違います。
確かに「新しい木製家具等の匂い」と言われればそうかも知れません。 安物の割り箸に近いかもしれません。
極微量の物質が、こんなにバラエティーに富んだ印象を与えるのです。
しかし、人の嗅覚は意外と頼りになります。 元を糺せば、答えてくれた物や部屋の臭いが、紙や木の匂い+酸臭と近い臭いであったものと思われます。 紙や木の匂い+酪酸を感じとった時に、視覚から入った情報とセットになって脳に記憶され、次また同じ臭いを嗅ぐとその情報とセットになって視覚の記憶がよみがえります。
このように考えると、人の嗅覚に刺激を与えて香りの想像力を高めているのは、良い香りだけでなく、極微量の異臭物質も重要な役割を果たしていると考えられます。
桜の花が咲く前に、匂いで春を告げる沈丁花の香りに、スカンクの最後っ屁で有名なインドールやスカトールが含まれていると知ったら驚く人もいるかも知れません。
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