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消毒臭やカルキ臭を感じる場面は誰にでも時々あります。
たとえば、水道水、ポットで沸かしたお湯、レストランのコップに入った水を飲んだ時などです。
消毒臭と言えば、塩素そのものの臭いだと思われがちですが、実は消毒臭やカルキ臭の大半は、塩素や臭素とフェノールが反応したハロゲン化フェノール類が原因で発生しているのです。
塩素そのものの臭いは、まさしくプールの臭いで、消毒臭やカルキ臭とは若干臭いの質が異なります。
消毒臭やカルキ臭を呈する物質は図1の様に、微量のフェノールと塩素が反応して生成するクロロフェノール類です。 そのクロロフェノール類で、最も臭いが強いのは2,6-ジクロロフェノールです。 この物質の閾値(臭いを感じる最低濃度)は、0.1ppb程度と言われています。 他の2物質は10ppb程度です。 皆さんがどこかのレストランで水を飲んで「消毒臭い!」と感じた時は、水道水の塩素と反応して生成した0.1ppb以下のごく微量の2,6-ジクロロフェノールを嗅覚が検出しているのです。 但し、含まれていても極微量なので、毒性の心配は全くありません。
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図1.消毒臭やカルキ臭の発生メカニズム |
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図2に、ある食品素材の消毒臭クレームの分析結果を示しました。 GC-MSのピークでは2,4-ジクロロフェノールが2,6-ジクロロフェノールの4倍程度検出されていますが、2,4-ジクロロフェノールの閾値は高い(臭いは弱い)ので、このサンプルの異臭原因物質は2,6-ジクロロフェノールということになります。
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図2.消毒臭やカルキ臭のGC-MS分析例 |
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この様に消毒臭やカルキ臭は塩素そのものの臭いではなく、塩素と反応して生成した極微量の閾値が低い塩素系の有機物であると言うことは、あまり知られていない様です。
ジクロロフェノール類による消毒臭の異臭事故は、常にベストテンの中に入るほど頻度が高く起こっています。 塩素を使用しなければ異臭事故を防げるのですが、衛生面を考えると現状では無理です。
やはり、塩素を使うと消毒臭やカルキ臭が発生するというメカニズムを知って、事故を未然に防ぐほかないのでしょう。
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